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Bugabooは、カナダ、ブリティッシュコロンビア州。脊梁のロッキー山脈の西列にあたり、カルガリーの西200km。標高3000m前後の花崗岩の岩峰群があるクライマーの巡礼地。

7月30日入山
31日bugaboo spire south ridge
8月1日mctech arete (padle flake)
2日 mctech arete (west side story)
3日 荷揚げ
4日 Bugaboo NEridge
5日 rest
6日 mctech arete
7日 pigeon-howser col へ移動
8日 south howser becky-choinard
9日rest
10日wild flower (に行く予定が違うところ登ってました) 11日下山
【メンバ】澤田(2004年入部)、井ノ上、木城(2009年入部)<計画が実現するまで>
2007年、南米アルゼンチン。広大な荒地を走るぼろぼろのバスの中、「またどこか大きな岩峰に行こう」と考えていた。
現役3年目、幸運にも山岳部の先輩とパタゴニアの岩峰に登りに行く機会に恵まれたのだが、結局一つの岩峰も登りきることはできなかった。
帰国後、いろいろ調べたエリアの一つにカナダ南西部にある「Bugaboo(バガブー)」という所があった。花崗岩の岩峰が氷河上に林立しており、天気も安定している。苦手な英語のガイドブックを購入したりした。
しかし、実際に計画を実現させる事もなく数年が過ぎた。その間はアックス、アイゼンを使って攀るような山が多かった。そうしているうち、仰々しい金属物を通してでなく、素手で岩の感触を感じながら登れるような岩登りに魅力を感じてきていた。昨年、夏メイン後、本州にいた現役とクラッククライミングをしているうちに話は進み、ようやくこの夏「バガブー」にいくこと になった。
パートナーは休学して山岳部現役3年目として活動する井ノ上、水産学部生で函館に移行した後も山やクライミングを続けている木城の2人。山岳部として年目は離れているが皆同じ団体で育っており安心感がある。
<買い出し>
カナダは小奇麗で、治安がよくて、そして物価が高かった。酒は特に高い。我々3人(少なくとも僕は…)財力に乏しく、けちだ。しかし、買い出しでの3人の意見は一致していた。「酒だけはちゃんと買おう!」。結果、ビール38缶、ウィスキー2本、ラム2本という大量の酒を購入してしまった。当然、こんな量の酒と10日分の食料、クライミングギアを一気にベースキャンプまで荷揚げすることはできない。まず、4日分程度を持ってBC(ベースキャンプ)にあがり、残りはレスト日に荷揚げする事になった。
<クライミング-前半>
荷物の重さに喘ぎながらBCについた。BCは氷河を目の前に望むキャンプ場だ。クライマーがわんさかいる。まずはバガブーの様子を伺うことを考えた。天気が安定しているとはいうもの夕立のようにやってくるサンダーストームは結構なものらしい。
BCから歩いて1時間もしないうちに取り付けるMctech Arête AreaにあるPaddle Flake(6ps 5.10b)West Side Story(6ps 5.10a)Mactech Arête(5ps 5.10a)の3本を登った。だんだんと1p毎の長さにも慣れてきたように感じる。山群の名前の由来であるBugaboo spireにあるNE ridge(10ps 5.8)は少し長めのルートを、アイゼン等を背負って登る必要があった。スピードには軽量化が重要だと分かった。
僕ら3人が是非登りたいと一致していた所があった。BC付近から氷河の奥に岩峰が見える。このHowser Tower(ハウザータワー)という岩峰は東面(BC側)からみるとなんてことない岩峰に見えるのだが、氷河を横断し、反対側に下ると西面は切れ落ちており750m以上の岩壁となる。とてもかっこいい壁だ。その中で最も自然(そして易しい)に登れるのがSouth Howser Tower Becky-Chouinard Route(17ps 5.10a)である。僕としてはここに登るためにカナダに来たようなものだ。
8月7日。国立公園のレインジャーの持ってきた情報から考えて、入山以来続いている好天周期もあと2,3日で終わりそうだ。このチャンスは逃せない。午前中レストして、午後3時ごろから行動を開始する。壁の西面を登攀し、東面をラッペルして氷河に降り立つ予定だ。今日は取り付きへのルートを偵察し、東面の下降地点の近くにあるPigeon-Howserコルにてビバークすることにする。仲良く3人くっついてオープンビバークとする、星が美しい。
翌朝、準備しているとラテルネの光が近づいてくる。BugabooのNE Ridgeを同じ日に登って仲良くなったカナダのリチャード=クリスのペアだ。また、ルートがかぶってしまった。しかし、彼らの方が早いと知っているので先行してもらえばよい、気が楽だ。
コルから西面の氷河は傾斜が緩い。軽量化の為、アイゼン等はおいていく事にする。氷河を下りきってから西面にのびるリッジを登っていき取り付きへ。夜が明けてくる、風もなく快晴。絶好の登攀日和だ。

はじめは5.7程度の快調なピッチだ。60mいっぱいを2p(ピッチ)で小ハングをもつ3p目下のテラスへ着く。リチャード達がハングにとりかかっている。日が当たってきて暖かくなってきた。続いて僕らも下部核心とされるハングを越え、さらにもう1p60m登ると大デヒードラル下のテラスに着く。まさに巨大なデヒードラル(凹角)だ。ここから3pは木城がリードする。背後の高度感を感じつつ、美しいデヒードラルを登る楽しそうなピッチだ。5.8、120mのデヒードラルを2pで越え、クラックを登るとグレートホワイトヘッドウォール下のテラスに着く。このヘッドウォールはまた名前の通り、白く美しい壁だ。ここからワイド系になるという事で、リードがワイド担当(?)の僕に交代。レイバックが印象的なピッチを終えると上部はチムニー状となってくる。簡単なチムニーを登ってピッチを切る。その次のピッチ、出だしは容易なチムニーなのだが、25mほど登るとクラックのサイズが小さくなってきて、オフビズス状になってくる。クラックの奥には氷が詰まっていたり、濡れていたりして悪く感じる。滑りそうで時間をかけてしまった。続くピッチもチムニーが続くと見えたが、すぐにガリー状になり、左壁のハンドクラックを60m快適に登る。その次のピッチは井ノ上にリードを交代。10m程登り、壁の左側のリッジへ向かってテンショントラバースしていく。
リッジの向こうに見えなくなってからも順調にロープがのびていく。ここも60mいっぱい登ると、リッジ上のコルに出た。ここから右下の頂上に伸びているガリーに向かって25mラッペルだ。降りてみると、ガリーは雪があったり、脆そうなところはあるが概ね容易に見える。コンテにして所々プロテクションを取りながら頂上へ向かう。ガリーを詰めると、頂上直下のリッジに出た。最後ナイフリッジを登ると念願のピークについた。3人集合してはしゃいでいるうちに夕闇が迫ってきた。暗くなる前にできるだけラッペルをしておきたいので下降にかかる。下降は強固なボルトの打たれている東壁のルートをラッペルしていく。途中で日も沈み、暗闇に覆われる。途中で懸垂支点を見失って登り返したりしつつも、無事11回のラッペルを終えて氷河上に降り立つ事ができた。ようやく安全圏につき緊張感から開放される。あとはトレースのついた氷河を歩き、ビバークポイントにデポしていた荷物を回収してBCへ戻った。深夜0時半、BCに着いた。腹が減ったので、ラーメン作って、今夜もビールで乾杯。旨い!

<雹にうたれながら敗退>
ハウザータワーから戻った後、あまり人の登っていないというSnowpatch Spire西面のWild Flowerというルートに行くことにした。今日のリードはじめは井ノ上。1ピッチ、2ピッチと浅い凹角状を登っていく。しかし、どうもルートとしては怪しい。3ピッチ目、汚いチムニーに入ってしまった。これはルートとは違うなという話になったが、登りきれるのではないかと進んでみることにする。4p目、リードを僕に交代。一段登ると下降用のボルトのあるテラスへ。5p目、だんだんクラックが細く、泥が詰まるところが多くなってきて泥をかき出したりして登る、逡巡してしまう。6ピッチ目、少し登るとクラックが左右に分かれる。右のオフビィズスを登ると、ぽつんと一つボルトがあった。直上は厳しそうなので、このボルトで左にテンショントラバースして左のクラックにうつる。しかし、このクラックも細くなってしまう。手持ちのギアではエイドもできない。頂上稜線はすぐ上にみえているが、進めない。7ピッチ目、可能性をもとめて左手のリッジへトラバース。しかし、リッジの向こうはボロボロに風化した岩が続いていた。敗退決定。5,6,7pと時間をかけてしまい午後も遅くなってしまっていた。余り天気も気にしていなかったが雲がでてきている。気づいた時には遅く、雹と雷がやってきた。とうとう、サンダーストームにあってしまった。急いでラッペルして下るが、雹は激しさを増してくる。時折、ルンゼに溜まった雹がチリ雪崩のように襲ってくる。粒がでかいので痛いし、積もった雹は滑るし、手足は冷たいし…と不快だ。しかし、幸運にも下降用のボルトが打たれており、それを使って楽に下降できた。4回程度のラッペルで氷河上に帰れ、この頃には雹もやんできた。沢登りの下山後かと思わせるような汚い格好でBCに戻った。リードに時間をかけてしまい、その結果として嵐につかまってしまった。反省し、今後改善していくべき点が浮かび上がった登攀だった。
<クライミングを終えて>
今回、天候にも恵まれ楽しんでクライミングをすることができた。大きな山を攀じ登っていくのは楽しい。予想以上にクライマーもいて、考えていたよりも緊張感は少なかった。しかし、思い入れをもっていた所を登れて単純に嬉しかった。また、今後この経験を次の山登りにつなげていきたいと思う。

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