第3回北大山岳館講演会
ヒマラヤの上昇
2011年6月25日(土) 13:30〜16:00
2011年6月25日(土) 13:30〜16:00
なぜヒマラヤを研究するか? ヒマラヤは周知のようにインド大陸とユーラシア大陸が衝突した結果できた。衝突とその後の断層運動により、通常の大陸地殻の2倍の厚さを持つ地球で最も厚い大陸地殻が出来上がり、世界最高の山脈を形成した。この高さは地球の大気の運動に大きな影響を与えている。したがって、ヒマラヤを研究することは、我々の生活を左右しているアジアモンスーンがいつ頃からいかにして形成されたのかを理解する鍵ともなる。
講演でははじめに、チベット・ヒマラヤ形成の素因である、超大陸(パンゲア大陸)のローラシアとゴンドワナ大陸への分裂、両者の間で東に広がって存在したテチス海、約1億年前から始まるゴンドワナ大陸の一部であったインド大陸の北上と約5,000万年前のユーラシア大陸への衝突過程を紹介する。
チベット・ヒマラヤ地域と一括総称するが、地質学的には成因はかなり異なる。チベット高原は、インドプレートの沈み込みによるマグマ活動の結果であり、一方、ヒマラヤは両大陸の衝突後に、さらに北上するインド大陸の深部に形成された東西に延びる大規模な断層群が原因になっている。それらの断層(衝上断層)は北側の岩石が南の岩石に押し上がる動きをもち、断層運動は時代とともに北から南に移動した。そのため、断層に境される厚い岩層が刺身状(あるいは瓦状、ドミノ構造状)に重なって、厚い地殻が出来、山脈上昇の一因となった。
【講演集冊子(4.7MB)】
■講演会概要
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昨年から始めました山岳館主催の講演会を開催致します。3回目の講演会となる今回は、木崎甲子郎先輩に「ヒマラヤの上昇」についてご講演頂くことと致しました。素人にも分かりやすく、たっぷりと語ってもらおうと考え、時間を充分に取りました。皆さんの知的好奇心を適度に刺激し、ややアカデミックな雰囲気に浸ってご満足頂けると期待しています。どうぞ、ご家族・友人・知人などお誘い合わせの上、万障繰り合わせてご参加下さいますよう、ご案内致します。
■講師紹介
- 木崎甲子郎(きざき・こうしろう)
1924年大分市生まれ、1951年北海道大学理学部地質学鉱物学科卒業。在学中は北大山岳部に所属。北大理学部助手、助教授を経て、1968年メルボルン大学気象学教室研究員、1972年琉球大学理学部海洋学科教授、1990年定年退職。1993年ネパールトリブバン大学地質学教室客員教授(JICA専門家)、琉球大學名誉教授、理学博士 - 調査歴:1959年以来南極調査5回、1971年チリ−パタゴニア調査、1975年以来ネパール調査8回、1999年と2000年チベット調査、2005年タクラマカン砂漠周辺調査。
- 主な受賞歴:日本地質学会奨励賞 1955年、沖縄タイムス出版文化賞 1980年、沖縄タイムス伊波普猷賞 1985年
- 主な著作:「南極大陸の歴史を探る」(岩波新書)、「氷点下の一年」(朝日新聞社)、「氷河と岩と森の国 パタゴニア調査隊の記録」(共著 北大パタゴニア計画委員会)、「幻の内陸海―オーストラリア探検史話―」(山と渓谷社)、「南極航海記」(築地書館)、「琉球弧の地質誌」(沖縄タイムス)、「上昇するヒマラヤ」(編著 築地書館)、「ヒマラヤはどこから来たか:貝と岩が語る造山運動」(中公新書)など
■会場・問い合わせ先等
- 会場:北大山岳館 札幌市北区北18条西13丁目(北大構内北西隅、北大恵迪寮東側)
- 定員50名(先着順、参加無料)
url:https://aach.ees.hokudai.ac.jp/sangakukan/
E-mail:sangakukan@aach.ees.hokudai.ac.jp
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