切り抜き詳細
- 発行日時
- 2024-3-4 11:33
- 見出し
- Tribute Creek (New Zealand, Westcoast, Harihari)
- 記事詳細
- Tribute Creek (New Zealand, Westcoast, Harihari)(沢登り/オセアニア)日程:2024-02-18〜2024-02-22メンバー: hazuki2012r fukumoto_2013写真:途中で見つけた青いキノコF9〜F3は登りと同じく右岸岩棚Wanganui川本流についたなんか見えてきた森へ。この辺りは斜度も獣道ついていてそれほど苦労せず。本格的なゴルジュとなる捲きの途中のFantail。たまに尾羽が扇のように開いてキレイ。F22F16と17の捲き始めF22、福本絶妙なライン取りで右岸直登。F22を懸垂で降りて左岸から捲くことにする偵察に行く。F20の中ほど。この先が怖いのでロープ出したF13 20m見に行くが厳しそうだ左岸捲くやっと下山時に登り返せそうな場所を発見。懸垂で降りる。結果論だが入口の滝を2つ捲いたらさっさと懸垂するのが正解。F18.5は懸垂高捲きに突入F12のクライムダウンやっと下山時に登り返せそうな場所を発見。懸垂で降りる。結果論だが入口の滝を2つ捲いたらさっさと懸垂するのが正解。雨の日のテンバロードを5キロほどちょうどよい岩があったので捨て縄まいて支点にしたCo560二股 左はF16 これは登れない三股の快適テンバ。すぐ先の二股 70mくらいの登れそうな滝F19左岸側の稜線帰りはすんなり渡れたお、、、?300二股付近はすごいガレまさに門。奥が15mのF22入山サザンアルプスの主稜線すぐに日陰渡渉点のHot Spring Flatに到着奥に見えているいかつい谷がHot Spring Creekこの日は渡渉できずF10F2 二回目お助け出したところ渡渉点まで遡るF13は右岸懸垂交代で仰ぎ続ける事約2時間、ついに火はつかなかった。が、このおかげで温まったという事にする800m頭上の源頭まで水流ある場所はすべて滝この景色を見られたので引き返すことにする初日テンバ。Sandflyが鬱陶しいこの辺が特にすばらしい楽園に帰還捲き終わりの400二股捲いたゴルジュの偵察暫定版ですF19以降の滝番号など修正箇所あるので後日差し替えます懸垂して様子見に行こうかとも思うが、、、F20の下部。下部は右岸のチムニー状、上部はチムニー~シャワーで登った。苦労して右岸からF10捲いたところHot Spring偵察。手に負える感じではないように感じた。F18は左岸から。振り返るとタスマン海その奥にF23 写真だと8mくらいに見えるが三段30mこれは手が出ない…翌日 なんとか渡れた思ってたのと違う渡渉点までの道入山地点F20晴れ植生のあるラインからお助け出した多分シャモアとかいうカモシカ系の獣ニュージーランドにいる蝙蝠以外の哺乳類はすべて外来種早く日なたへ行きたい河原についた。水位+2~3mの所に数日前の雨の侵食跡があったF14は登りと同じく左岸捲いて懸垂F1F14の捲き始めはやや立ったルンゼ状で、一応ロープ出したF19 右岸登るよく見ると登りの時と水量が全然違うF12はクライムダウン登りの時はF11とまとめて左岸をまいたところ目覚め 濡れもの 10℃は下回っていた息は余裕で白いF2Co690の広い三俣についた。正面に730二股の滝が見えている。捲いた滝Hot Spring源泉発見。源泉は30℃後半か。渡渉で冷えた身体にGood見た目以上の激やぶこの捲きで時間切れかなF11-12濡れと寒さでヤラれてきたので来た道を戻りテンバ探すことにする記念撮影して引き返し入山前からびびらさるしばらく河原を挟み、上部ゴルジュが見えてきた。写真の奥がF214時間くらいこの風景Tribute Creek出合雰囲気出てくる、水量多く渡渉がいちいち地味にしんどい翌日。テンバすぐのF18最終日 大捲きした560‐650ゴルジュはF16,17のみ小さく捲くことができた。下りはタネが割れているので早いF20の上部。捲いたゴルジュを下って内部を確認してみるが、意外と中は何もなかった。写真は捲き初めの二股から見えていた連瀑。帰りはここから左岸を上がれそうなことを確認してから先に進む。Harihariに帰ってきたお疲れ様ですF3?この辺から右岸の岩棚で捲くF11手前。懸垂で一度沢に戻ったF21は大岩の隙間から這い上がる捲いたゴルジュの偵察テンバから。増水のピークを過ぎたころ。すぐ先の二股 70mくらいの登れそうな滝迫力あり、左岸から取りつきF11は懸垂捲きの途中から見えたF17 感想:福本詳細な記録をありがとう。自分のメモから小話メインで補足しておきます。2/14・東京で幸せそうな五島と飯。2/16・間違えて羽田空港に向かっていた。途中で気づいて良かった。2/17・この時期のHokitikaの気温は夏の終わりの北海道くらいの感覚。ザブザブと中を行くには結構寒い。・Hokitikaまでは小さなプロペラ機。空からArther`s PassやMt. Cookを見下ろすナイスフライト。・ Kiwiは想像以上にデカくて、走ると早い。2/18(Day 1)・植生が熱帯林に近いものを感じて驚いた。West Coastはタスマン海で水分を含んだ雲によって雨が多いらしい。最初はホールドスタンスとして信用できなかったが、慣れれば日本と同じ感覚で使えた。ただしグニグニした小さいヤシの木みたいな植物は全体重をかけると根元からもげる。・Hot Spring Flatまでの林道の途中ですごく不思議な声で鳴く鳥に出会った。通称ねじまき鳥。帰って調べるとTuiという鳥で、2つの声帯を持っているらしい。2/19(Day 2)・Tribute Creekの下部はCo520屈曲くらいまでは川原だろうと話していたが、予想に反して巨岩やゴルジュに苦労させられた。・Tribute Creekは増水の速度と勢いはかなり迫力があった。増水も早かったが、減水に関しても同様だった。引き返し判断は妥当だったと思う。2/20(Day 3)・山行全体を通して高捲きは辛かった。下船直後で山的な体力が全然仕上がっていない事や、この手の本格的な沢は数年ぶりという事もあり、福本にはよく前を行ってもらい助けられた。・捲きの途中で、白いセキレイのような鳥によく付きまとわれた。最初は近くに巣があり威嚇しているのかと思ったがずっとついてくる。時折長い尾羽を扇状に広げてアピールされる。帰って調べるとFantailという鳥で、人間の動きに驚いて飛び出してくる小虫を食べるらしい。途中からは求愛されているのかと思っていたが、違ったようだ。・Co690三股はゴルジュの奥に現れた円形劇場のよう。景色よし、薪あり、虫少なし、でまさにオアシス。今日の苦労が一気に報われた。2/21(Day 4)・寒すぎてまともに寝られず。肩から上がタープから出ており結露していたのも良くなかった。朝起きると喉が痛く明らかに体調を崩してしまった。そもそも持参のシュラフがペラペラの夏用だったが、結果的にはこの時期になら3シーズン用の方が良かった。・F21~の高捲きは特に過酷だった。そもそもの計画の1/4くらいしか進めなかった訳だが、藪の中の引き返し地点は山行の到達点として悪くないロケーションで、満足しての引き返しだった。2/22(Day 5)・下部の川原の砂地には金色のピカピカが堆積している箇所がいくつかあった。砂金かもしれない。・最後、河原から林道に戻る時に、ブロンドの散歩のお姉さんが逆に川原に降りようとしていた。が、僕らをみて踵を返した。2/23・ヒッチでHokitika。福本と解散してヒッチでSpringfieldへ。・Smyliesというホステル泊。ここはオーナーさん最高(奥さんは日本人です。食事もめちゃうま、自炊もできる。)、雰囲気最高、ドミトリーなら高すぎない(40ドル)、Castle Hillまでアクセス良好、マットレンタル可能、そういう人たちがよく利用している、などなど、オススメな素敵ホステル。2/24-26・Smyliesで知り合った日本人のI夫婦にご一緒させていただき、Castle Hillでボルダリング。2度目のCastle Hillだそう。毎日車にも便乗させてもらい、本当にお世話になった。・Castle Hillは草原の丘の上にボルダーがゴロゴロしている素敵空間。雲と風があるとかなり寒く、雲と風がないとかなり暑い。ここもまた再訪したい。2/27・ヒッチでArther`s Passへ。Active RestでAvalanch Peakへトレッキング。2/28・登りに行きたかったがガスガス。ヒッチでCave Streamへ。真っ暗な洞窟の中をキレイな小川が流れる。水も気温も結構低い。腰まで浸かる。デートにおすすめ。2/29・ヒッチ三発でHokitikaに戻る。お土産買って帰国。・成田空港に預け荷物が着かなかった。オークランドでは荷物Pick Upしなくていいと言われたからそうしたのに、オークランドで荷物Pick Upしなかったから届いてない事になってた。一転、成田での丁寧すぎる対応に感動。========= しばらくガッツリ系の沢登りから離れていたので期待と不安が入り混じっていたが、結果としてとても良い山行だった。Day3で3.5時間かけて高捲いた区間を、下りではものの30分で通過。答えが分かっていればこんなにもあっけない。未知の沢でこういう経験ができるのは本当に充実度満足度が高い。苦労して未知を解き明かすような過程は楽しい。多少ブランクがあってもセンス的なものは割とすぐ戻ったと感じられたのも嬉しかった。三十過ぎて、ぐちょぐちょの泥の上に葉っぱ敷き詰めて凍える未来はあまり想像していなかったが、寒空の下で南十字星を眺めながら幸せを感じた。 ハイポテンシャル素敵山域を見つけてくれた福本に感謝。ぜひあの先を見に行きましょう。 四月から半年間関東勤務になりました。基本土日休みらしいです。ぜひ遊んでください。ニュージーランドで沢登りしようと思い立ったのが具体的にいつのことだったかはあまり思い出せないが、大学院休学中の2018年に海外遡行同人最終回にふらっと参加した時のことは覚えている。たしか報告のお題目の一つが大西良治氏のグルーミーゴルジュ下降で、異次元空間みたいなゴルジュの中を色んな技を駆使して下っていく様子が紹介された。なんだか曲芸でも見ているかのような気持ちで報告のスライドを眺めていた。全長3km、標高差800mの激ゴルジュの中で2泊3日(3泊だっけ)する、みたいな世界で、ちょっとここまではやれないなあというのが率直な感想だった。報告会の後のアルコールゴルジュ(治安悪い飲み会)では、当時は誰だかよくわかっていなかった佐藤裕介氏とちゃっかり同卓になったりした。「ニュージーランドの沢はすごいんだけど捲いてるうちに終わっちゃうんだよね」みたいな話が出て、そうかー捲くしかないのかーと頭スカスカの相槌を打ったものだった。たぶんこのときにニュージーランドでトラディショナルな一般的沢登りをするのにちょうどいい(=凡人が挑んでも捲きに終始するだけになるほど激しくなく、無味乾燥な河原でもなく、適度な難しさの滝やゴルジュを捲いたり登ったりできて、沢中2泊くらいを要する規模の谷をその気になればいくつか繋ぐことのできる)場所を探してみようという着想を得たのだと思う。普通の沢登りをしたいのならわざわざ海外に出る必要はないし、未遡行の谷筋だって国内にたくさん残っているというのは確かに一理ある。しかし本流筋とか目立つ支流を無造作に選んでも基本的に手つかずというのはやはり海外遡行の大きな魅力といえるだろう。その半年後、3ヶ月ほどニュージーランドに滞在する機会があり、ドンパの平井とアスパイアリング山に登りに行くなどした。その際に周辺の谷に注目してみると、河川の本流はU字谷で非常に穏やかな渓相なのに対し、その支流はU字の側壁を穿つため極めて急峻な険谷を形成していることが見て取れた。確かにこれは極端な遡行内容となるのも頷ける。しかし、ということであれば、逆になるべく氷河の影響が少なそうなエリアであれば日本的な沢登りの余地がありそうだとも思った。その後の滞在中にどこか沢行ってみようかなと思うものの、単独で行く勇気もなく、なんだか消化不良のまま日本に帰ってきたのであった。とはいえ、このころ時間だけは捨てるほどあったのでニュージーランド国内の地形図を読み込んだりした。その時に出した結論は、山岳地帯である南島の中で、氷河による地形への影響が限定的なカフランギ国立公園(南島の一番北)が良いのではないかというものだった。実際に良さそうな沢をピックアップしたりもした。そして5年ほどの月日が流れ、ちょうど南半球の盛夏にあたる2月に長めの休みを取る機会に恵まれた。最初はかねてから温めていたカフランギの沢に行こうと考えたのだが、いかんせんこの辺りの山は標高が低い。日本国内では下田川内のような例があるにしても、やはり流程の中にある程度標高差があったほうが魅力的な渓谷となりやすいのではと思い、別のエリアを模索することにした。あまりに険しい谷ではかえって何もさせてもらえないというジレンマを抱えつつ、高い飛行機代を払うのだから少しでも色々出てきそうな沢に行きたいと思うのが人情というものである。このような紆余曲折の末に出した答えが、「南島 West Coast 」であった。同地域はニュージーランド有数の田舎だが、サザンアルプス山脈が南島中央よりも西海岸寄りに走っており、すそ野が小さいことから山地までのアクセスがよい。なおかつ湿潤な気候によるものか山脈前衛部には深いV字谷が多く、特にHokitika~FranzJosef辺りがよさげである。今回はアプローチの観点から町から歩いて入山できるHarihari周辺の沢に狙いを定めた。船上の羽月さんとラインで打合せしながら、地形図を見る限り山域で最も登攀的と思われるTribute Creek を登り、最もゴルジュがすごそうなHot Spring Creekを下る計画を立てた。========2/17前日夕方から成田、オークランド、クライストチャーチと乗り継いできた飛行機は午前中にHokitikaに到着した。タクシーで市内まで移動してホテルにチェックインする。national kiwi center でキーウィを見たりする。街のキャッチフレーズはsmall cool town らしい。確かにいいところだけど1日で満足かな。まずは登山の拠点となる村のHarihariまで移動する必要があるため、インフォメーションセンターでバスについて調べると、1時間程度の距離の割に60ドル以上するそうで結構高い。相方の羽月さんは「高いな ヒッチにしようや」と言う。彼は某商船会社の船員なので給料はかなりもらっているはずだが、即座にこの選択肢が出てくるのは流石である。自分は社会人になって躊躇なく高速道路を使うようになったりしたが、失いかけていた物を思い出させてもらった気がした。2/18今日は我々にとっての登山基地であるHarihariに移動するだけの予定。8時に起き、カフェで朝ごはんを食べたのちにスーパーで酒を買い足したりしてからホテルを出る。町の横を流れる大きな川の橋の手前でヒッチを試みると、20分ほどでキャンピングカーに乗ったご夫婦が拾ってくれた。オーストラリアから3週間の休みで旅行中で、フランツジョセフ氷河を見に行くところだという。1時間ほどでHarihariに到着する。街に入る前に通り過ぎたWanganui川が思いの外大きい。これ渡渉大丈夫なのか。街に着いたらとりあえず荷物を置きたいのでキャンプ場にテントを張って昼飯を食べたりする。計画上は翌日に近くの日帰りの沢で足慣らしの予定であったが、翌日が雨の予報だったため、今日明日はハリハリに留まり、悪天をやり過ごしてからメインの計画に入山しようと話していた。しかし明後日の入山だと初っ端のWanganui川渡渉が雨後の増水で困難になると考え、降り出す前の翌日午前中に渡ってしまう方が得策と方針が変わる。そうと決まれば天気良く暇を持て余している今日中に渡渉点まで移動してしまった方がよいということで、山用にパッキングを行う。キャンプ場に余分な荷物を預けられないか頼むが、すげなく断られてしまった。しょうがないのでもう一軒あるペンションのようなところに頼みに行くと、荷物を預かってくれる上に入山地点まで車で送ってくれるという。何と親切な。Wanganuiの右岸にある林道通行止めの場所で降ろしてもらい、いざ出発。看板があり、この近辺はオポッサム駆除のための毒餌を撒いているため見つけても触らないようにとある。通りがかりのアベックに聞くとエリア内は水も飲まない方が無難とのことであった。入山地点から進むとしばらく歩きやすい林道だが、川による侵食が激しく、時折寸断されている。こうした場所に出くわすたびに巻道のようなものが付いているため急な登り降りがそれなりにある。しかも道はドロドロしている箇所も多い。そんな悪路になるとは知らず、下界で消費する予定だったスパゲティソース(ザックに入れると事故りそうな容器に入っていた)を片手に持って歩いていたため難儀した。2時間ほど歩いて渡渉点のHotSpringFlatに到着した。できれば今日中に渡って対岸にあるHotSpringCreekの偵察をしてしまいたかったため、渡渉を試みる。始めにHotSpringCreek出合の少し下流の瀞場のように見えるポイントで試すが、水圧重く危険を感じたため断念。吉四六どんの渡し舟よろしく引き返す。続いて少し下流の川幅が広い場所を試してみるがいきなり深くてまたしても断念。次に少し上流に見にいってみるが、良さそうなところは見つけられず、最後に2回目に試した地点の少し下から上下に中洲を繋ぐルートを試みるが、あと2,3メートルで流芯を越えられそう、というところで急に深くなり引き返し。これはまずい。地元の温泉おじさんが何なく渡って対岸の野湯に入っている記事を見つけ当てにしていたのだが、こんなところで敗退の可能性が出てきた。往復22万もかかったというのに…こんなところで日本人とのフィジカル差を見せつけないで欲しかった。そしてWanganui川本流も問題だが、尾根の裏に少しだけ見えるHotSpringCreekの谷も相当に険しく、でかそうだ。安易に入ってきたやつはぶちのめすぞという雰囲気がびしびし伝わってくる。でもまあ、今日は渡渉成功とはいかなかったが、Wanganui川の源流は氷河であり、朝の方が流量が少ないということも一応考えられるため、とりあえず日帰り沢への転進も視野に入れつつ渡渉点付近の河原で泊まることにする。荷物を広げたりしていると体やザックに悪名高いサンドフライがわらわらと群がってきた。ブユによく似ている。日暮れにいなくなるはずと思っていたらサマータイムで日没は21時と遅い。しかもやっと日が沈んだ後もしぶとく1時間くらい飛び回っており閉口した。こいつらには早寝遅起きを心がけて欲しいものだ。2/195時に起きる。今日は午後から雨の予報である。差し当たり雨が降る前になんとか渡渉を成功させたい。なるべく虫が出てこないうちに支度する。とりあえず昨日一番いい線行った中洲を繋いでいくラインでもう一度渡渉を試みることにした。昨日と同じように中洲まで渡り、そこから反対側の本流筋を渡るが、前日よりも中洲から上流側に遡ってから流芯に入っていく。へそより上ぐらいの深さになりスクラムを組んだりする。それでもじわじわと流され始めるが、足は下に着くので半分流れに乗りながらも河床を蹴って対岸までたどり着くことができた。やった!無事渡ることができたので、下降に使う計画のHotSpringCreekを偵察に行く。日本風に呼ぶとしたら「Harihari湯沢」といったところか。しかし牧歌的な名前の割に覇気がすごい。名前通り出合に温泉がある。ぬるめである。出会いからしばらくは河原だが、じきにゴルジュになる。谷が右に屈曲する辺りに釜滝があるが、すごい水量でとても手に負えない。ここでこの地域の沢の渓相やレベルを何となく察し、我々の実力ではとても事前情報なしに下降で使えるようなものではないことを悟る。とはいえ地形図を見る限り、この山塊では下降予定だったHotSpringCreekと遡行予定のTribute creekが両雄という印象なので、せめてTribute creekは登ってみたい。しかしそうなると問題は想像していた以上に密な植生である。Tribute creek上部はかなり険しく、計画段階から尾根を使って丸ごと捲く可能性を認識していたのに加え、下降路に沢を使えないとなると源頭から相当な骨を折って薮尾根を降りてこないといけない。結局、現実的な案として、Tribute creekを登れるところまで登って引き返してくる方針で進めることにする。先の読めない沢での同ルート下降ということで、滝を登っても降りてこられるか、捲きからの復帰で懸垂するにしても登り返せるかを常に考えなければならず、行動の選択肢に制限を感じながらの遡行となった。Hot spring creek出合いからWanganui川左岸を下り、Tribute creekに入る。出合のあたりこそガレているが、やがて小規模なゴルジュとなる。しかしまだゴルジュ内はゴーロ状のためどうということはない。260二股を過ぎると再び沢中をガレが埋める。上部に大規模な崩壊地を持つ300右股からもたらされたものだろう。320で左岸から滝となって支流が出合うといよいよ本格的にゴルジュとなり、また雨も降り出してきた。ゴルジュに入ってすぐの3mほどのF1は左岸側をボルダーチックに登る。直後のF2は右岸の2段の岩棚からお助けx2で越えた。その後もゴルジュの中に釜滝がいくつか出てくるが、いずれもツルツルかつ水量が多いため右岸の岩棚を辿ってまとめて捲いた(F3-9)。この間に雨に打たれてすっかり濡れ鼠になる。ガタガタ震えが止まらない。400二股で一度沢に戻ることができるが、二股の先も登れなさそうな釜滝(F10,11)が見えているため引き続き右岸を捲く。F10の落口右岸側はボロいリッジとなっており、岩棚が途切れてしまうためリッジの上まで登り、ルンゼを二つほど横切ってから登り返し可能なことを確認して懸垂で沢床に降りた。この捲きに1時間以上もかかったが、ほとんど進んでいないことに気付き一気に消耗する。ますます震えが止まらない。このまま進みつつテンバを探す事も考えるが、最もコンディションが悪い日に先の見えないゴルジュをこれ以上進むこともあるまいと考え、今捲いたところを少し戻ってテン場を探すことにする。先ほど懸垂した斜面の少し左のルンゼを登り返し、前述のボロいリッジの頭に出てから登ってきた斜面を降りると、整地すればなんとか泊まれそうな場所を見つけた。いよいよ本降りとなった雨の中頑張って整地したりタープを張ったりする。そうこうしているうちに沢はどんどん増水していった。ついさっきまで薪を探し回った大岩のあたりは完全に飲み込まれている。足元のF9を流れ落ちた水がゴルジュ内のちょっとした岩の出っ張りにぶちあたり、逆噴射した水飛沫がものすごい高さまで吹き上がっているのが見えた。水は茶色く濁り、水位はだいたい2-3メートルほど上がっているようだ。最近は雨が降りそうな時はわざわざ山に行かないことが多いのでこういう惨めったらしい目に遭うことはほとんどなく、かなり堪える。濡れものを何とか着干しできないかと粘るが気温低く湿度高いため全く乾かず、寒いだけなので諦めて着替えた。夕方になると雨が上がったため焚き火でもしようかと試みるが、元々普段泊まらないような湿気た森の中で良い薪が少ないうえ、雨もしっかり降ってしまったためうまく燃えなかった。7時ごろからもうひと降りあったりして、本当に明日晴れるのか不安になる。2/206時に起きる。くそ寒い。目の前には濡れた服が吊るされている。いまからこれに袖を通すのかと思うと心底うんざりする。着替えを先延ばしにしたくてゆっくり支度をしていると太陽が出て来た。途端に活力が湧いてくる。気合を入れて身支度をし、出発。昨日登り返したのと同じ場所を懸垂で下る。釜滝はへつって越えられないか試してみるがやはりつながっていないため左岸を巻きにかかる。途中に綺麗な青いキノコを見つけた。F11,12を捲いて懸垂せずに沢に戻り、ゴーロ帯を行くとやがてF13 20m斜滝が出てくる。左岸の草つきルンゼからお助けだして登るが長さが足らずごたごたする。その後沢は520で左に直角に曲がり、580二股の直前にF14 5mひょんぐり釜滝。左岸直登も考えたが左岸ルンゼから捲いた。懸垂して沢に降りると580二股。左股が本流だが、目の前のF15 3mはいいとして、奥に15mほどの登れそうにない滝(F16)があるため左岸の尾根に取り付き捲きにかかる。途中何度か降りようとするが、ゴルジュが途切れずなかなか下れない。同沢下降の予定なため、登り返しの目処が立たないと安易に懸垂が出来ず難儀する。3時間半ほど苦労して進むとようやく登り返せそうな岩盤の斜面を見つけた。650二股であった。懸垂で下り、捲いたゴルジュ中を見るために中を下っていくと、捲き始めの直瀑F16の上に10mほどの釜滝F17があるほかは特段何もなく、二つの滝ももっと短く捲けそうであった。上から見ていると厳しそうな釜滝がいくつかあるように見えたのだが、何てことはなかった。情報がない沢はやはりどうしても効率が悪くなる。懸垂した650二股に戻り、小滝を二つほど越えると690三俣に到着する。右股は20mほどの威圧的な直瀑で、本流は少し先に滝が見え隠れしている。開放的な地形で気持ちが良いのでここに泊まることにする。待ち望んだ焚き火で服を乾かす。元々の計画では何と町からここまで1日で来る計画だった。これぞ机上の空論。2/216時に起きる。放射冷却で冷え込み、結露がすごい。またしても震えながら支度する。下山に2日は見ておきたいので今日は残りの日程的に行けるところまで行って引き返すことになる。シュラフや余分な食糧はテンバに置いていった。テンバ出てすぐの二股手前のF18釜滝5メートルは右岸ルンゼから草つきを1ピッチロープ出した。続けて容易なF19 5mを右岸から容易に越えると直後に二股があり、両股が滝で出合っている。本流の左股は50mほどの斜瀑(F20)となっている。ツルツルだが寝ているのでこれも右岸寄りに直登すべく取りついていく。中ほどからトップで登っていた羽月さんが苦労し出したため、自分は途中で待機してロープ垂らしてもらった。冷える。確保してもらうとたいしたことないのだが、この手のフリクション系は高度感あると本当に怖い。苦手だ。この滝の後はしばらくゴーロとなるが、860二股の手前から威圧的に両岸が狭まり門のようになっている。F21 3mは登れないので右岸大岩の隙間から這い上がると、門の入り口に15mのF22がある。滝の下からその先の様子を伺うが、次の滝は見えず、F22は右岸直登できそうだったのでとりあえず登る。下部がヌメるがそれほど難しくはない。登ってみるとゴルジュの奥に3段30メートルF23が見えた。これは手が出ないので立ち木を支点に懸垂して戻り、左岸から高捲きを開始する。高捲きといっても要は立った斜面での藪漕ぎである。石楠花系の植物が高密度で生えており、斜度も相まって藪漕ぎとしてもかなりしんどい部類に入る。下から見た側壁はかなり高く、また急斜面と濃密な藪が合わさりルートの自由度が低い。じわじわトラバースしながらも100メートル以上も登ることとなった。そろそろ藪を漕いで2時間という頃、標高1000メートル付近で先を見渡せる場所に出る。そこからはtribute creek奥院の様子が目に飛び込んできた。支流も含め、足元から800メートル上の稜線まで水流のあるところ全て滝という光景である。中でも標高1100メートルまでが非常に困難そうに見えた。地形図によるとこのまま左岸を捲き続けても上流に106mの滝で出会う支流にぶち当たることになりかなり難儀しそうだ。引き返し時間も考えると、ここらで戻るのが妥当なところだろう。この先に進むにはあと2日か3日欲しいと思った。今回はこの光景を見られただけでも結構満足した。ひとしきり記念撮影を終えた後、登ってきた藪斜面を下った。河原を歩き、F19 40m斜滝は2段目は右岸捲き、1段目は懸垂で下降。F18は右岸を少しまいてから飛び込んだ。日がさしており気分爽快。16時ごろテンバに着いたので色々干す。今日は早めに寝た。2/226時起き。今日も今日とて寒い。この日はできるだけ沢を下りてwanganui川本流の渡渉点くらいまでは行きたい。テンバ出てしばらくはゴーロだが、650二股を過ぎると大まきしたゴルジュとなる。ほとんど中を行けることは確認済みなので降って行き、560二股上のF15-17 3m+10m+10m連瀑に着く。ここは左岸からブッシュ帯まで登って560二股の中間尾根を下った。その下のひょんぐり釜滝F14は登りでも左岸を巻いたが、下りではもう少し大きめに巻いて下ることに。左岸のルンゼをお助け出して登り、ブッシュ帯をトラバースして40m懸垂した。その後ゴルジュ状のゴーロを挟み、20m斜爆は登ったのと同じラインを懸垂下降。なんと懸垂の着地地点には持ってきたつもりだったが見当たらなかったキャメロット2番が落ちていた。やっぱ持ってきていたんだ、よかった。400二股上のゴルジュにあるF11,12はF12は右岸をクライムダウン、F11は右岸の岩にスリングをかけて懸垂した。F10は左岸をクライムダウンした。下降ではすでにタネが割れているのでほぼ中を行くことができた。雨をやり過ごしたテンバを懐かしみ、F9から2までは右岸を巻いて、3mF1は右岸クライムダウンするとガレの埋めた沢となった。川床から2メートルほどのところに増水跡ができていた。下りていると途中カモシカのなかまのシャモアらしき獣を見かけた。黙々と歩き、ついにwabganui本流まで帰ってきた。渡渉点まで遡りそのまま往路と同じようなルートでざぶざぶ進むとあっさり渡ることができた。浅瀬のつながり方の影響で帰りのほうが渡渉しやすそうだ。ついに安全圏まで戻ってくることができた!後は夏道を歩くのみ、と思いきや、道を外して急ながれ場登りをする羽目になったり、泥道で転んで突き指したりとストレスフルな道中だった。ついに車道まで到着し、靴づれを我慢しながら5キロほどのロードをこなすと、荷物を預けていた宿に無事戻ることができた。宿にはフリーの洗濯、乾燥機などがあり、洗い物や乾かし物を概ねその日中に済ました。預け荷物のビールで乾杯し、ふかふかベッドに潜り込んだ。========「「ニュージーランドでトラディショナルな一般的沢登りをするのにちょうどいい(=凡人が挑んでも捲きに終始するだけになるほど激しくなく、無味乾燥な河原でもなく、適度な難しさの滝やゴルジュが出てきて捲いたり登ったりできて、沢中2泊くらいを要する規模の谷をいくつか繋ぐことができる)場所を探してみよう」」というモチベーションで企画した今回の遠征だったが、この点についてはかなりの手応えを感じることができた。谷は中を行けたり行けなかったりして、ときには泊まるのにちょうど良い河原も出てくる。自分がこれまでやってきた沢登りをそのまま実践することができた。これは明らかに渓谷登攀やキャニオニングではなく沢登りと呼ぶべきものだ。そしてそれでいてやはり核心部は自分たちの実力を上回っていてまだまだ底が見えない。そういう意味で今回選んだ山域はまさに期待以上の場所だった。2ヶ月間目を皿のようにして地形図を眺めた甲斐があった。そして自分にとって得るものが大きかったのは、初めて地図しか情報のない谷に行き、まっさらな状態で沢登りを楽しめたことだ。もし仮に今回の引き返し地点まででグレードをつけるなら4級程度だと思うが、ゴルジュの先が見通せない状況で進んでいくのは何倍も難しく感じた。今回、遡行では捲きすぎてしまったきらいもあるが、主な原因は沢の未知性と自分達の力量によるものであって、渓相それ自体は捲きを要求する性質のものではなかった。現に、何が出てくるか分かっている下降ではほとんど内部を通過することができた。別に普段から記録をおぼえこんで山に入っているわけではないが、やはり少しでも見ると「この滝を捲いてゴルジュの中に懸垂し、ロープ引き抜いても詰まない」ことをある程度分かった状態で臨むことになるので、判断がはるかに容易であることを実感した。この辺の力量はアルパイン的な場数がものをいうと思うので、精進していきたい。総括すると、今回の一番の収穫はニュージーランドのWestCopastが沢登りの有望なフロンティアであることが確認できたことだと思う。自分自身の展望としては今回未遡行に終わったTributeCreek上流部にまたトライしてみたいし、それ以上に興味ある課題として下降予定だったHotSpringCreekの下部ゴルジュの中を踏査してみたい。興味あったらぜひ。