
メニュー
切り抜き詳細
- 発行日時
- 2025-9-25 10:35
- 見出し
- 穂高・滝沢大滝〜奥穂高岳〜吊尾根〜上高地
- リンクURL
- http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-8725442.html
- 記事詳細
-
穂高・滝沢大滝〜奥穂高岳〜吊尾根〜上高地(アルパインクライミング/槍・穂高・乗鞍)日程:2025-09-23(日帰り)メンバー: macchan90 Iida_2017コース状況/その他周辺情報:危険な大滝登り。写真:これは登らなかった部分だが、大変面白そうなラインだった。身震いする思いで見上げた。中段オルガンの音が聴こえた、気がする。あっ、毛が無い!感想: 十年ほど前に、一冊の本に掲載されていた写真を目にしたことが本計画立案の始まりだった。柱状節理で構成された特異な形状のその滝は、見る者にただならぬ印象を与える。 滝沢大滝は所謂上高地から北に位置する岳沢小屋の近く、奥穂南稜の取り付き右手にあって多くの目に触れられているにも関わらず、近年登られた話をとんと聞かない滝だった。そんな中、何故かそれが昨秋登られた様で、その内の一人が黒部で会ったことのある人物だというのが如何にも不思議だった。・・・・・まあいい。 この滝を単に登攀するだけではなく、沢登りの一行程として捉えて滝沢を奥穂へ至る登路として考えたい、というのが我々の趣旨だった。 北海道から飛んできてくれた大学山岳部後輩のIida君とは親子ほども離れた歳の差だが、彼が登山に対して高い志の持ち主であることはヤマレコの記録を読むと解る。初対面でもあり、上手く協調できるかの不安も正直あったけれど、結果的に我々は良いコンビになれたし、共に旨い酒を酌み交わすことが叶った。登攀の詳細はIida君に任せるとし、私からは概略を伝えたい。登山大系には?級A1とある。今回、滝には雪渓流水共に無く、ロープは下段で3ピッチ、上段で4ピッチ出し、アブミは使わなかった。チームフリーと言うのだと、後で教わった。9/20;岐阜の釜戸駅で合流し、松本の我らが先輩yoneyama夫妻のお宅で厄介になる。朗らかに呑みつつも、明日からの登山に緊張もして。雨が降ってきた。9/21;松本から白馬村へ向かうも目的の沢は昨夜来の降雨で意外にも濁水を流しており、一度は入渓を考えて林道を歩いたものの早めの判断で転進し、サブプランの穂高は滝沢へ向かった(滝谷、ではない)。バス料金をマケて貰って上高地入りし、サブサブプランのボルダー「岳沢ダイス」の初登(多分)も忘れずに【5級】。見えてきた滝沢大滝は上中下段とあり、下段部分の目処だけは立ったところで戻り、呑んで寝た。9/22;【下段:40m】は、昨夕の2ピッチ分の右手凹角フィックスを伝い登り、柱状節理の好意的"欠け"をスタンスに落口方向へとトラバースして終了。【中段:5m】は記憶にない程に易しい。さて、本命の【上段:60m】へと近づくと、その偉容にちょっと声が出た。私もこれまで随分な数の滝を見てきたけれど、これに似た滝が思い付かない程の特異さで、大聖堂のパイプオルガンのような滝と言えば伝わるものもあろうか。右手にルートを採るのは落ち口部分が大層厳しそうに見えたことから、柱状節理の傾斜・方向も勘案して(傾斜を殺そうと)左手のチムニールンゼ状を登路とし、落ち口を目指した(結果として、右手を登った訳だが)。尚、私のリードピッチは上下段滝それぞれの出だし?で、それ以外はすべてIida君が担ってくれた。Iidaピッチにはどれも厳しい登攀が含まれており、上段???ピッチと登るにつれてその厳しさのグレード、心拍数が上がっていく。私は沢登りの世界でこれまでに有名無名含め何人もの"悪いところに強い"漢たちと登ってきたが、Iida君は26の若さでそんな彼らに遜色ない力量の持ち主だった。胆力、度胸というのが正しいかも知れない。この高度感じる中でプアプロな上にランナウトにも耐え、臆することなく上昇し、ラストの抜け口最終ピッチではビレイするロープを伝ってビリビリと震えるものを感じた。実際にフォローすると、その忍耐強さや思い切りの良さに集中力、大胆不敵さが理解できる痺れるようなダイレクトラインに感動すらした。心で吠えて、小さく吼えたことに共感できた。露出感がマジ半端無く、ラインの美しさも手伝って、後続ながら55でこんな体験はそうざらにできるものではないと感じた。落ちたら一連托生部分を越えてきて、共に喉がカラっカラだと、落ち口で笑い合って煙草を呑んだ。後は涸滝涸沢をグングン登高し、時に這松も掴んで南稜へと合流し、その南稜頭から日本第三位の高峰に立ったのが15時前のこと。Iida君は、二つの五級を登って辿り着いたこの山頂の、最もイカシたラインからの登頂者に違いない。斜光に照る吊尾根を眠気を振り切って歩き通し、幾度目かの下降になる重太郎新道を辿った。 デシマルグレードで表せないあの悪さを含んだ今回のライン、おいそれとは再登を許すまい。悪い、実に悪かった。9/23;抜け殻状態・身体バキバキの我々(私だけ?)は、ヨロヨロと起き出しては茶をシバき、食料を消費し、またヨロヨロと上高地へと下山した。おっと、「岳沢ダイス」再登のムービーを撮ることも忘れずに。面白い、と言って貰えて満足です。沢渡のマル秘沢の偵察をし(!)、更にはツキノワグマとの遭遇のお土産も付けて帰途について拙宅へ。帰宅して身綺麗にして祝杯を挙げた。こんなにも旨い酒を呑んだのは果たしていつ以来のことだろう。夜更けまで呑み、来夏の約束をして固い握手を交わし、手を振った。 熱く、素晴らしい体験をした。