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書評・出版・ 2005年10月15日 (土)

(書評)高い山はるかな海/米山

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高い山はるかな海―探検家ティルマンの生涯
J.R.L.アンダーソン (著), 水野 勉 単行本 (1982/11) 山と渓谷社

ヒマラヤ探検時代から黄金時代に活躍したイギリスの探検家、W.H.ティルマンの生涯をうまくまとめた伝記です。ティルマンの人生全体を俯瞰できて良い本です。

残念ながら絶版で、今度はさすがの北大山岳館蔵書にも見あたりませんでした。(追記:その後入りました)文庫本にでもならないものか。毎度絶版本の書評ばかりで恐縮です。「読めない本の書評シリーズ」これは新分野かもしれません・・・。

冬の黒部剣岳の登攀者、大阪の和田城志氏を訪ね、24時間近く酒を飲んだり風呂を浴びたりして(和田氏は住宅街の庭に手製の露天風呂がある)山の話をしたその中で、H.W.ティルマンの生涯をまとめたこの本を読めと勧められました。既に絶版、古本屋で買い求めました(インタネットは古書を探すのに革命的に便利になった)。

探検家シプトンと共に有名なティルマンは、戦前のイギリス統治下のヒマラヤ探検時代にガルワールの名峰ナンダデヴィに初登し、1938年にはエベレスト北面のアタックをわずかに残して帰還、戦後は中央アジア、ネパール、ビルマと空白部を歩き、50代半ばで高峰登山を諦めてからはヨットを使った遠洋航海+山登りを始め、パタゴニア、南極海、グリンランド、バフィン、シュピッツベルゲン・・・と80歳で行方不明になるまで探検を続けた。彼の最後の航海の船の名はアナヴァン(前へ)でした。

イギリス人だ!と痛切に思うのは彼の戦争体験だ。1898年生まれの彼は第一次大戦の西部戦線で奇跡的に生き残り、第二次大戦では探検家の名声を一切利用せず、40歳過ぎの「老兵」として過酷な空挺部隊に志願、アルバニアや北イタリアに降下してパルチザンと共にドイツ軍と実戦を戦った。戦争と聞けばどう逃げるかを考えるのが現代日本人の発想だろうが、ティルマンは戦争が始まると探検を切り上げて急いで帰国します。

時代の常識、イギリスという特殊国の事情、ご本人の資質などあまりにも日本のこの時代と違います。しかし、彼のやり方に深く共感しました。自分の体で背負える規模の遠征を良しとし、ノート用紙一枚で説明できないような計画を立てない。物資を持ち込まず現地の小麦を使って自分でパンを焼く。自転車でアフリカを横断し、小さなヨットで地球を縦断する。科学技術や組織ではなく、人の身体に付けられる能力だけを使って企画し実行し通しました。旅行、山旅は、装備を省き、主体的に、自分の知力、技能を最大限生かし切ってこそ価値あるものになるし、力も高まる。

僕もいつかヨットを始めるかも知れないと予感しました。ティルマンの人生を読んだだけで、自分の人生の先までが楽しみになり勇気が湧くという本です。現在日本では、ティルマンの著作は「ナンダデヴィ登頂」始めすべて絶版、この伝記さえも絶版とあっては全くがっかりだ。図書館で探せば、あるいは見つかるかも知れません。
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さわがき   投稿日時 2008-12-11 12:56
駒沢氏寄贈本で山岳館蔵書に加わりました.
 
 
 
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