57 氷河の山旅 田中薫(たなかかおる)/1943/朋文堂/334頁
田中薫(1898-1982) 地理学・経済地理学者、登山家
湖沼学の権威田中阿歌麿博士を父として、東京に生れる。東京高等師範学校付属中学に入学し、大関久五郎(1871-1918、明治-大正期の地理学者、日本アルプスの地形などを研究)に学ぶ。1924(大正13)年、東京帝大理学部を卒業後、欧州、米国に留学、現地の山々を調査、研究して氷河学に多くの成果をもたらした。神戸商業大学(現神戸大学)教授を長く続け、南北アメリカ、東南アジア経済地理学に貢献した。戦後、神戸大学山岳部長として幾度かの海外登山を計画、1957年には日本初のパタゴニア探検を行なう。神戸大学を退官後は、婦人の千代と共に田中千代学園の創立にあたり、副理事となる。
内容
氷河に魅せられた地理学者の欧米・日本の氷河・氷河跡を歩きながら綴った随筆、紀行集である。「氷河」他随筆5編、大政翼賛会の文化政策の一環として松竹が製作した文化映画「日本の氷河」制作記録3編、アルプス・北米紀行8編、エトロフ・台湾紀行などからなる。いずれも昭和初期から戦時下昭和17年までの作品である。
「序」で、著者が氷河学に入ったきっかけを次のように述べている。
「私は大正元年に、東京高等師範学校付属中学校に入学したが、そこの地理の先生は、その数年後、氷河学者として有名になった故大関久五郎先生であった。私は『山』より先に『氷河』について学んだと思う。大学時代に、故山崎直方先生や、辻村太郎先生の如き優れた氷河学者の教えを受けたが、氷河に対する不思議な憧れの心持は、やはり子供の頃、大関先生から植え付けられたものだと思っている。そんな訳で、私における『山』と『氷河』との関連は、学問的でなく、素人的であるが、寧ろ、主観的に深い物があると思う。」
山岳館所有の関連蔵書
大氷河を行く‐南米地理・パタゴニア探検/田中薫/1958/毎日新聞社
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山麓滞在/岩科小一郎/1942 |
雪に生きる/猪谷六合雄/1946 |