OBの山行記録・ 2005年8月4日 (木)
記録・クワウンナイ(カウンナイ)沢→化雲岳(米山)
画面手前はナメ一面に毛布のようなコケがびっしり生えています
撮影仕事ではありましたが、初めてカウンナイへ行きました。評判に違わぬ名渓でした。大雪の高地も新鮮でした。現役の頃は夏の大雪の辺りはあんまり行かなった。まだまだ道内の山知らないなと思いました。写真機が水没してしまい、源頭以降の豪快なお花畑の写真が撮れませんでした。
【ルート】
天人峡→カウンナイ川→ヒサゴ沼→化雲岳→天人峡
【メンバ】
米山悟(84年入部)蛭田弥希(早大山岳OB)、野入善史(95年入部)、内藤美佐雄(美瑛山岳会)
【行 程】
7月31日:カウンナイ川(8:00)→標高970mカウン沢二股C1(16:20)
8月1日:二股C1(5:45)→標高1016雪渓(6:15)→1080m魚止め滝→滝の瀬十三丁→標高1170m雪渓くぐる→1340mハングの滝→標高1370m両滝の二股→源頭→稜線縦走路(15:45-16:00)→ヒサゴ沼天場C2(17:55)
8月2日:C2(7:25)→化雲岳(10:30)→天人峡(17:00)
カウンナイは入渓して稜線までおよそ15キロ。林道無しの無垢な沢の、行程二日目に幅20m、長さが1.5キロの滝の瀬十三丁をはじめナメナメ天国が延々続く。源頭はヤブ漕ぎ無しの雪渓、下山路はお花畑を丸一日彷徨った。難しい所は無いが、水量が多いとお手上げになる人気ナンバーワンの沢。
撮影の仕事で、カメラマン蛭田君(早稲田山岳部OB)と、バイトの野入君(95年入部)、地元山岳会の内藤さんとの四人パーティー。時間は撮影しながらなので通常の2-3倍をかけている。
一日目はやや増水気味の単調な河原を行く。右へ左へ渡渉数十回。中州や岸辺には古い踏み跡が結構あり。内藤さんによれば、入渓禁止だった16年間でずいぶんこういう道が不明瞭になったとのこと。カウンナイはこの何も無い一日目が貴重だ。林道を降りていきなり滝の瀬十三丁では、山の深みの味わいが落ちる。
C1二股でオショロコマを追う野入君
二股には指定テントサイト有り。営林署の限定入渓許可制度では焚き火禁止とされている。何故禁止なのか根拠は不明だ。沢登りで焚き火が出来ないと、様々な不具合があり、良いことが何もない。
二日目は30分ほどで雪渓。左岸を乗って通過。温度差で水上に霧。要塞のような魚止め滝を登ると、遂に待ってましたのナメタキストリートが始まる。しかし仕事で来たのが辛いところ。これをあの手この手で撮影すべく智恵を絞る。ナメには厚いコケがフサフサ茂り、布団の上を歩いているようだ。野入君は深さ3mの丸い滝壺に競泳ゴーグルで飛び込んでみたり、ウオータースライダーをしたり体全体でクワウンナイを味わう。具合良く日が射し、東向きのナメがきらりきらりよく光る。
標高1170m雪渓をくぐって通過
1170mの、デブリの溜まりそうな屈曲点はくぐり抜けの雪渓が残っていた。1340mハングの滝、1370m二股の滝も巻き道がバッチリだ。源頭は内藤さんに寄れば例年に比べとても雪渓が多く残っている。稜線に上がると、カウンナイ左岸の小さな池をたくさん載せた、平らな高原地形が広々と見えてきた。人の分け入るはずもないその辺りののどかそうな風景に目を奪われた。
標高1200mあたりの長いナメ
大雪山の稜線歩きは、思えばこれまであまり憶えがない。現れては消える小規模な地平線とガスで全体像はよく分からないが、ヒサゴ沼までの距離は地形図の印象よりも相当長いしヒサゴ沼も大きい。山椒魚だらけの沼の水でタビを洗い、飯を炊く。
三日目は化雲岳初登頂。南から向かうと野原に直径7mほどのミカンのような岩が置いてあるような山頂だが、北の忠別川方向から振り返り見ればジャンダルム並みのかっこよさだ。山頂岩の上に登ると、忠別川源頭の谷を見下ろせて圧巻だ。
下りは長い尾根道ではあるが花に詳しい内藤さんに名前を教わりながら、満開、大規模なお花畑の中を誰にも会うことなく下った。これだけの花はこれまでに見たことがない。樹林帯の中、標高1360の湿原では、ワタスゲが盛り。花の変化の多いこのルートは地図での印象ほど退屈では無かった。薄底の地下足袋で足の裏のツボを刺激し続けて下ったので、足の調子もすこぶる良い。天人峡温泉の露天風呂で小雨をあびて、高原の花畑を思い返した。
【カウンナイ川の名称について】
学生時代(80年代)カウンナイ川と呼んでいた沢が、10数年ぶりに北海道に戻って、山岳部以外の山登りをする人のほとんどがクワウンナイ川と呼んでいるのを聞いて、違和感を憶えた。山岳部では今もカウンナイ川と呼んでいる。しかし、道内の大多数の岳人がクワウンナイ川と呼んでいるようだ。
確かに5万図には今も昔もクワウンナイ川と書いてある。以前これは、何故かはわからぬが旧仮名遣いの表記であり、呼び名はカウンナイと呼ぶものだと了解して居た。それについて少し書いたみたい。
周辺の地名はアイヌ語の語源を持つ地名であり、そもそもの音はカウンナイに近いものだった。それに和人が山頂の名前にもある「化雲内」の漢字を当てた。
「化」の字は戦前まで一般的だった旧仮名遣い表記では「くわ」である。カウンナイ川だけが、北にある別の化雲沢川や化雲岳とちがい、仮名表記だったため、戦前→戦後の仮名遣い改訂の際、取り残された。戦後、旧仮名遣いの表記が急速に忘れ去られ、文字の通り読む人が増えた。北大山岳部では、文字だけではなく、先輩から後輩へ沢の名前は音としても継承されたため、誤読みをすることがなかったのではないだろうか。
なお旧仮名遣いでは、「化」「華」「花」などは「くわ」、「科」「可」などは「か」と書いた。発音はもちろんどちらも「か」だ。前者は中国語で「ホワ」後者は「クア」という風に違う音だ。旧仮名遣いとはこのように、中国語の元の音の違いをかなり強く区別しているので、中国語学習をした人にはなるほどという風にわかる。「ホワ」が「くわ」に入れ替わる変化(hとkの入れ替わり)は他の言葉などでもよく見られる現象です。
カウンナイをクワウンナイと発音することはたとえば、「ごりやうくわくにゆきませう」と言って五稜郭に行くようなものだ。Wednesdayを「ウェドゥネスダイ」と読み上げるようなものだ。「クワウンナイ」ではもとのアイヌ語の意味を推し量れないようになる。1000年近くもかけて培われた日本語の正統的な表記法、旧仮名遣いに対する無知が常識になったということでもある。
撮影の仕事で、カメラマン蛭田君(早稲田山岳部OB)と、バイトの野入君(95年入部)、地元山岳会の内藤さんとの四人パーティー。時間は撮影しながらなので通常の2-3倍をかけている。
一日目はやや増水気味の単調な河原を行く。右へ左へ渡渉数十回。中州や岸辺には古い踏み跡が結構あり。内藤さんによれば、入渓禁止だった16年間でずいぶんこういう道が不明瞭になったとのこと。カウンナイはこの何も無い一日目が貴重だ。林道を降りていきなり滝の瀬十三丁では、山の深みの味わいが落ちる。
C1二股でオショロコマを追う野入君
二股には指定テントサイト有り。営林署の限定入渓許可制度では焚き火禁止とされている。何故禁止なのか根拠は不明だ。沢登りで焚き火が出来ないと、様々な不具合があり、良いことが何もない。
二日目は30分ほどで雪渓。左岸を乗って通過。温度差で水上に霧。要塞のような魚止め滝を登ると、遂に待ってましたのナメタキストリートが始まる。しかし仕事で来たのが辛いところ。これをあの手この手で撮影すべく智恵を絞る。ナメには厚いコケがフサフサ茂り、布団の上を歩いているようだ。野入君は深さ3mの丸い滝壺に競泳ゴーグルで飛び込んでみたり、ウオータースライダーをしたり体全体でクワウンナイを味わう。具合良く日が射し、東向きのナメがきらりきらりよく光る。
標高1170m雪渓をくぐって通過
1170mの、デブリの溜まりそうな屈曲点はくぐり抜けの雪渓が残っていた。1340mハングの滝、1370m二股の滝も巻き道がバッチリだ。源頭は内藤さんに寄れば例年に比べとても雪渓が多く残っている。稜線に上がると、カウンナイ左岸の小さな池をたくさん載せた、平らな高原地形が広々と見えてきた。人の分け入るはずもないその辺りののどかそうな風景に目を奪われた。
標高1200mあたりの長いナメ
大雪山の稜線歩きは、思えばこれまであまり憶えがない。現れては消える小規模な地平線とガスで全体像はよく分からないが、ヒサゴ沼までの距離は地形図の印象よりも相当長いしヒサゴ沼も大きい。山椒魚だらけの沼の水でタビを洗い、飯を炊く。
三日目は化雲岳初登頂。南から向かうと野原に直径7mほどのミカンのような岩が置いてあるような山頂だが、北の忠別川方向から振り返り見ればジャンダルム並みのかっこよさだ。山頂岩の上に登ると、忠別川源頭の谷を見下ろせて圧巻だ。
下りは長い尾根道ではあるが花に詳しい内藤さんに名前を教わりながら、満開、大規模なお花畑の中を誰にも会うことなく下った。これだけの花はこれまでに見たことがない。樹林帯の中、標高1360の湿原では、ワタスゲが盛り。花の変化の多いこのルートは地図での印象ほど退屈では無かった。薄底の地下足袋で足の裏のツボを刺激し続けて下ったので、足の調子もすこぶる良い。天人峡温泉の露天風呂で小雨をあびて、高原の花畑を思い返した。
【カウンナイ川の名称について】
学生時代(80年代)カウンナイ川と呼んでいた沢が、10数年ぶりに北海道に戻って、山岳部以外の山登りをする人のほとんどがクワウンナイ川と呼んでいるのを聞いて、違和感を憶えた。山岳部では今もカウンナイ川と呼んでいる。しかし、道内の大多数の岳人がクワウンナイ川と呼んでいるようだ。
確かに5万図には今も昔もクワウンナイ川と書いてある。以前これは、何故かはわからぬが旧仮名遣いの表記であり、呼び名はカウンナイと呼ぶものだと了解して居た。それについて少し書いたみたい。
周辺の地名はアイヌ語の語源を持つ地名であり、そもそもの音はカウンナイに近いものだった。それに和人が山頂の名前にもある「化雲内」の漢字を当てた。
「化」の字は戦前まで一般的だった旧仮名遣い表記では「くわ」である。カウンナイ川だけが、北にある別の化雲沢川や化雲岳とちがい、仮名表記だったため、戦前→戦後の仮名遣い改訂の際、取り残された。戦後、旧仮名遣いの表記が急速に忘れ去られ、文字の通り読む人が増えた。北大山岳部では、文字だけではなく、先輩から後輩へ沢の名前は音としても継承されたため、誤読みをすることがなかったのではないだろうか。
なお旧仮名遣いでは、「化」「華」「花」などは「くわ」、「科」「可」などは「か」と書いた。発音はもちろんどちらも「か」だ。前者は中国語で「ホワ」後者は「クア」という風に違う音だ。旧仮名遣いとはこのように、中国語の元の音の違いをかなり強く区別しているので、中国語学習をした人にはなるほどという風にわかる。「ホワ」が「くわ」に入れ替わる変化(hとkの入れ替わり)は他の言葉などでもよく見られる現象です。
カウンナイをクワウンナイと発音することはたとえば、「ごりやうくわくにゆきませう」と言って五稜郭に行くようなものだ。Wednesdayを「ウェドゥネスダイ」と読み上げるようなものだ。「クワウンナイ」ではもとのアイヌ語の意味を推し量れないようになる。1000年近くもかけて培われた日本語の正統的な表記法、旧仮名遣いに対する無知が常識になったということでもある。
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コメント一覧
米山 悟
投稿日時 2005-8-19 6:37
本当だ、撮られているー。このカメラも水没していたが復活したようだ。僕は水没を機会に完全防水デジカメを新調しました。しかし最近のデジカメは凄いもんですなあ。
Sawagaki
投稿日時 2005-8-17 19:19
北大水産ワンゲルのホームページ(http://circle.cc.hokudai.ac.jp/hufwv/)に「動画−滝の瀬13丁−NHK撮影班を撮る!」という動画が掲載されています.
米山さんの歩く姿がばっちり.
米山さんの歩く姿がばっちり.