書評・出版・ 2007年10月2日 (火)
【書評】海外溯行研究No.1/米山(1984)
海外溯行研究
台湾の谷(1963〜1993)
2007海外溯行同人No.1
溯行流程40キロ、溯行日数一週間、高度差3500m、両岸高さ数百mの函、大理石の豪快な滝、釜、滝、釜。こんな沢登りが日本でできるだろうか。未知の沢、凄い沢を追い求めて、ついに台湾にはまった、全国の沢キチたちの会、海外溯行同人の記念すべき報告書第一号である。沢が好きなら、読むべし。
台湾には、黒部や飯豊を何倍も深く、長くした谷があり、九州と同じくらいの大きさの島の真ん中から東半分はほとんどが山。標高3952mの最高峰玉山はちょうど北回帰線の上にあるが、雪の積もる高山だ。台湾山脈全体が、日高と同じ褶曲山脈で、プレートの押しくらまんじゅうで今もぐいぐい押し上げられているアツい島なのである。
同人代表の茂木完治氏らが台湾の沢を始めたのが1982年。80年代は茂木氏や清水裕氏らが所属していた大阪わらじの会と、関根幸次氏のいるわらじの仲間が中心になって台湾五岳(いずれも3000m級の名峰)の各沢を次々溯行した。これには荘再傳氏はじめ台湾の岳人たちの協力が大きい。台湾の山は台湾人の協力無しに入れないためだ。この間に交流を重ねて沢登りも台湾に根付きはじめた。
90年代になると台湾をねらいに定めたメンバーは全国各地から山岳会を越えて集まった。青島靖氏(チーム野良犬)、成瀬陽一氏(充血海綿体)、松原憲彦氏(AACH)を中心に、東面の未知の渓谷に精力的に溯行が成された。
そして1998年、海外溯行同人が結成され、より広く全国の沢好きを台湾溯渓、海外溯渓に巻き込むようになった。この一号はこの前半部分(茂木、関根時代)にあたる。続く二号で90年代の記録が見られる予定。
また1963年日本山岳会関西支部と1967年九州大学山岳部、1982年には大阪山の会がいずれもそれぞれのルートで最高峰玉山を登っている。その記録も収められている。
溯行記録は以下の16本
1982.8/14-17 玉山・沙里仙渓
1983.10/29-11/3玉山・沙里仙渓
1984.4/30-5/4雪山・七家湾渓
1985.4/29-5/5南湖大山・陶塞渓
1985.10/5-10/11関山・唯金渓
1985.12/29-1/5北大武山・隘寮南渓
1986.11/2-11/8大覇尖山・大安渓(下流)
1988.5/3-5/8大覇尖山・大安渓(上流)
1986.11/2-11雪山・大甲渓支流・伊下丸渓(高山渓)
1987.4/29-5/6台北近郊・南勢渓支流・扎孔渓左俣
1988.10/1-11玉山・楠梓仙渓(中退)
1989.10/5-8玉山・楠梓仙渓
1989.8/13-17奇莱主山北峰・塔次基里渓源流
1987.12/28-1/2北大武山・太麻里渓・南大武東渓
1991.12/30-1/6北大武山・太麻里渓・包盛渓
1992.12/25-1/3太麻里渓・北大武東渓
これに加え概念図と丁寧な溯行図で44p分。写真7p、巻末にメンバーの小文集あり。茂木さんの漫画5p付き。全記録の溯行図と写真が豊富な付録CD付き。A5版232p。発行は2007.6/23。
1987年の李登輝総統に変わるまでは、今の台湾からは考えられない厳しい政治体制だった。その困難な時代によく溯行許可などを得たものだと思う。荘氏はじめ、人のつながりが、これまでの台湾溯行の歴史を繋いでいる。
米山は海外溯行同人に98年から加わっていながら、未だ溯渓の機会を得ていないが、以前道ルートからの玉山、太魯閣渓谷のさわりなどを見、原住民族の老人の村を訪れた。台湾の山と人は世界中で唯一日本人と共有できる共通項を持っているのではないかと思える。懐かしく、一際大きい。
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・一般価格2500円(送料別)ただし五冊以上で送料無料。
kaigai_2007@ares.eonet.ne.jpに
● 氏名●冊数●送り先●届け希望日と希望時間を連絡
・ 申し込みを確認したら、出版局より金額(本代+送料)と振込先口座番号を知らせます。
・ 指定口座への振り込みを確認したら本を送ります。とのことです。
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今後は台湾その2,ニュージーランドやグアムの沢、韓国の沢など、まとめていく予定とのこと。
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