書評・出版・ 2009年6月12日 (金)
【書評】岳人7月号の記事から二題の感想(米山1Q84入部)
備忘録・中西健夫(ナカニシヤ出版)インタビュー
追悼・伊藤達夫・・・和田城志による
追悼・伊藤達夫・・・和田城志による
岳人7月号のp122「備忘録」でナカニシヤ出版の中西健夫氏のインタビュー記事があった。関西から奥美濃、鈴鹿などのヤマ本を出版している京都の会社だ。全般に装丁はちょっと野暮ったいけれど、よくぞまあ出してくれたという感じの山の本を出版してくれる頼もしい出版社だ。「鈴鹿の山と谷・全六巻」や「北山の峠」「秘境・奥美濃の山旅」「近畿の山・日帰り沢登り」など、名古屋にいた頃拝読、一目置いていた出版社だ。その後はヒドゥンピーク(ガッシャーブルムI峰)とミニャコンガの初登記も出版、こんな本今時売れないだろう〜と思って余計な心配をしていたら(もちろん購入)、三万円もする「カラコルム・ヒンズークシュ登山地図」も出した。一体どういう会社なんだろうと思っていたが、その内情を話している。こういう志ある山の本は全体の8パーセントくらいで、他の本のもうかったぶんで出しているとのこと。1500冊や2000冊売れればいいやと、その部数でも採算とろうと思えばとれるんです。という発言は頼もしかった。
「山の本を出すところ、少なくなりましたなあ。」「戦前の関西の岳人では藤木九三さんと森本次男さんこのお二人が文章としては一番うまいのでは〜ああいうものを書いてくれる人がもっといるといいですけどねえ。百名山しか売れへんようじゃあきませんなあ。」「おたく(岳人出版)でママリーの『アルプス・コーカサス登攀記』出しましたでしょ、あれ注目してたんです。あの手の本が売れればうちでも出したいものがいっぱいあるんです。でもちょっと残念ですねえ。」ああ、やっぱりダメなのか・・・復刊はとてもうれしかったのに。
数年前、とある出版記念会でやはり山の本を果敢に小規模に出している白山書房の箕浦氏に「エーデルワイス叢書みたいな探検未踏モノの復刊して欲しいです。最近出る山の本はハウツー本ばかりで、行くのは古書店ばっかりですヨ。」と訴えた事がある。「いやそれはヤマヤマなのですが、朋文堂の二の舞にはなれませんわ。」と苦笑された。誰も気持ちは同じなのだ。
「とにかく山の本、みなさん読まなくなりましたね。このごろの中高年の山歩きって健康第一で文化を忘れている。登山は文化なんやで。健康のためだけの登山なんてもったいない。」
京大の正門前にあったナカニシヤ書店時代から、今西錦司との深いかかわりがあった書店だったそうで。ナカニシヤの社長さんの読書趣味が分かってとても楽しい記事だった。
もう一つは今年の春北ア黒部の鳴沢岳で遭難死した京都府立大山岳部の、二人の学生を率いていた伊藤達夫さん(同大助教でコーチ・51才)の、和田城志氏による追悼文「風雪に響く魂を知る男〜私の心の中にまた憧れの墓標がひとつ〜」(p156)。
これを読むまでこの遭難の当事者があの「黒部別山ー積雪期ー」の和田氏との共同編集者とは存じ上げなかった。この本はあまり出回る本ではないが(つるの大内さんにまわしてもらいました)、黒部別山、剱沢大滝、丸山東壁フリークたち(黒部の衆)が生涯の情熱をかけて残した積雪期記録を編集したとてもマニアでマジで重い本。この本の4割が二人で書いた記録で、解説もほとんど二人で書いたとのこと。黒部で一番マニアなお方と仰いでいた和田さんが、「私も相当マニアックに雪黒部に取り組んできたが、彼のマニアックの純度にはかなわない。」と告白している。「そのストイックな登り方にはある種の美学が感じられる。私が常々語ってきた『名を取らず、実を取る登山』の典型的な実践者だった」。
最後の詩編「知る男」は男泣きだ。
「山の本を出すところ、少なくなりましたなあ。」「戦前の関西の岳人では藤木九三さんと森本次男さんこのお二人が文章としては一番うまいのでは〜ああいうものを書いてくれる人がもっといるといいですけどねえ。百名山しか売れへんようじゃあきませんなあ。」「おたく(岳人出版)でママリーの『アルプス・コーカサス登攀記』出しましたでしょ、あれ注目してたんです。あの手の本が売れればうちでも出したいものがいっぱいあるんです。でもちょっと残念ですねえ。」ああ、やっぱりダメなのか・・・復刊はとてもうれしかったのに。
数年前、とある出版記念会でやはり山の本を果敢に小規模に出している白山書房の箕浦氏に「エーデルワイス叢書みたいな探検未踏モノの復刊して欲しいです。最近出る山の本はハウツー本ばかりで、行くのは古書店ばっかりですヨ。」と訴えた事がある。「いやそれはヤマヤマなのですが、朋文堂の二の舞にはなれませんわ。」と苦笑された。誰も気持ちは同じなのだ。
「とにかく山の本、みなさん読まなくなりましたね。このごろの中高年の山歩きって健康第一で文化を忘れている。登山は文化なんやで。健康のためだけの登山なんてもったいない。」
京大の正門前にあったナカニシヤ書店時代から、今西錦司との深いかかわりがあった書店だったそうで。ナカニシヤの社長さんの読書趣味が分かってとても楽しい記事だった。
もう一つは今年の春北ア黒部の鳴沢岳で遭難死した京都府立大山岳部の、二人の学生を率いていた伊藤達夫さん(同大助教でコーチ・51才)の、和田城志氏による追悼文「風雪に響く魂を知る男〜私の心の中にまた憧れの墓標がひとつ〜」(p156)。
これを読むまでこの遭難の当事者があの「黒部別山ー積雪期ー」の和田氏との共同編集者とは存じ上げなかった。この本はあまり出回る本ではないが(つるの大内さんにまわしてもらいました)、黒部別山、剱沢大滝、丸山東壁フリークたち(黒部の衆)が生涯の情熱をかけて残した積雪期記録を編集したとてもマニアでマジで重い本。この本の4割が二人で書いた記録で、解説もほとんど二人で書いたとのこと。黒部で一番マニアなお方と仰いでいた和田さんが、「私も相当マニアックに雪黒部に取り組んできたが、彼のマニアックの純度にはかなわない。」と告白している。「そのストイックな登り方にはある種の美学が感じられる。私が常々語ってきた『名を取らず、実を取る登山』の典型的な実践者だった」。
最後の詩編「知る男」は男泣きだ。
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コメント一覧
ご苦労様です
投稿日時 2010-10-27 15:15
松下さん、マメですね(笑)
ゲスト
投稿日時 2010-7-17 23:20
伊藤を素晴らしいと思われていますか?
京都府立大学山岳会と事故調査委員会(第三者)による事故報告書が4月に刊行されています。岳人の8月号にも紹介されています。
真実の伊藤の姿が浮き彫りにされ、岳人誌等で英雄化された虚像が霧消します。
京都府立大学山岳会と事故調査委員会(第三者)による事故報告書が4月に刊行されています。岳人の8月号にも紹介されています。
真実の伊藤の姿が浮き彫りにされ、岳人誌等で英雄化された虚像が霧消します。