新穂高温泉→槍平冬期小屋C1→(飛騨沢登高)→飛騨乗越→大喰岳→(大喰岳東面カール大滑降)→槍沢ロッジC2→(槍沢登高)→槍ヶ岳の肩(槍岳山荘)→飛騨乗越→(飛騨沢大滑降)→槍平冬期小屋→新穂高温泉
【行程】
4月28日(土)(曇→雷→雪) 気温0℃(到着時)
新穂高温泉無料駐車場Co1040m(8:50)→林道ゲートCo1120m(9:00)→穂高平小屋Co1340m(10:00)→柳谷Co1450m(10:30-11:00)→白出沢出合林道終点Co1540m(11:30)→チビ谷デブリ通過Co1620m(13:10)→滝谷避難小屋Co1750m(14:00)→槍平冬期小屋Co1990mC1(15:50)
4月29日(日)(快晴) 気温ー3℃(出発時)
槍平冬期小屋Co1990mC1(5:50)→飛騨乗越Co3010m(10:00)→大喰岳3101m(11:00)→(大喰岳東面カール大滑降)→槍沢と合流Co2350m付近(12:00-13:30)→槍沢ロッジCo1830m(14:00)
4月30日(月)(快晴) 気温10℃(朝食時)
槍沢ロッジCo1830m(4:40)→槍沢Co2200m二股(6:30-55)→槍沢Co2600m付近(8:30)→槍ヶ岳の肩(槍岳山荘)Co3080m(10:40-11:30)→飛騨乗越Co3010m(11:50-12:00)→(飛騨沢大滑降)→槍平冬期小屋Co1990m(12:40-13:30)→滝谷避難小屋Co1750m(13:50)→登返しCo1540m付近(14:40-55)→白出沢出合林道終点Co1540m(15:20-30)→柳谷Co1450m(15:50-16:00)→穂高平小屋Co1340m(16:20-35)→林道ゲートCo1120m(17:20)→新穂高温泉無料駐車場Co1040m(17:30)
【地図】(五万図)上高地、槍ヶ岳
【記録】
GWの前半は、昨年の北アルプス・双六岳周辺スキー山行と同じメンバ(石橋兄と山森の2名)で、北アルプス・槍ヶ岳周辺スキー山行に行ってきた。今年は雪不足が心配されたが、少なくとも標高が高いところでは全く問題なく、逆に、今までの私のGW山行では、一番、山々が真っ白だとの印象であった。入山日こそ、雷と吹雪の悪天候だったが、二日目、三日目は、雲ひとつない快晴で、計画を貫徹した上に、三日目に頑張って13時間行動して、予定より1日早く下山できた。
3000m峰山頂からのスキー滑降は私の今までの人生で初めての経験であったし、標高差3310mも登って下った(スキー滑降は標高差2900m)と思うと、実に充実した山行であった。
<1日目>
新穂高温泉から、雪のない蒲田川右股林道をシートラして歩いて入山。今年は雪不足が心配されたため、雪がなくても困らないように夏道沿いのルートを選定しており、シートラで長時間歩く覚悟は出来ていた。しかし、ラッキーなことに、1時間半位歩いた柳谷(Co1450m)より先は、林道にべったり雪がついている。ここでスキーを履いて、運動靴はデポする。先行者の自転車(MTB)もデポしてあり、これが噂に聞くMTB&山スキーかと関心する。
スキーを履いてすぐ、断続的に雷が鳴り響きだした。雨が降り出しそうだったので雨具の上下を着たとたん、あられが降り出した。五万図の白出小屋に避難しようとしたが、地図の位置に小屋は見当たらない。雷も収まってきたので、先に進む。林道終点から夏道に入ると、トレースは夏道伝いではなく、Co1540m付近で沢(右股谷)に降りて、以降沢沿いについている(写真)。天候は吹雪となってきたが、計画通り、槍平冬期小屋まで入った
槍平冬期小屋は、とても快適だ。夕食は、キムチ鍋うどん。この日の宿泊者は、6パーティ計15名。夕方遅くには、女性の単独行の方も到着した。他の多くのパーティは小屋の中にテントを張っていたので、同宿者との会話や情報交換がなかったのは少々寂しい。快適な小屋の中で、更にテントを張っても、小屋が狭くなるだけだと思うのは私だけだろうか?
<2日目>
昨日の吹雪がうそのように、朝から快晴。涸沢岳などの穂高連峰がタンネの森の向こうに見える。雪を被ったタンネの森は、美しいし、心がなごむ。昔、十勝の白いところで吹かれた時、タンネの樹林帯に無事逃げ込んだ時の安心感が、身にしみているのだろう。そんな理由のせいかどうかは分からないが、雪を被って美しいタンネの森を見ると、本当に心がなごむ
昨年GWに行った、双六岳(2860.3m、写真右端)や弓折岳(2588.4m、写真中央右)を背に、飛騨沢をシール登高する石橋兄。写真では切れて写っていないが、さらに左には、抜戸岳(2812.8m)や笠ヶ岳(2897.5m)も聳え立ち、美しい景色だ。写真でわかるように、雪不足の心配をよそに、山々は真っ白だ
飛騨沢上部をシール登高していると、3000mの主稜線(飛騨乗越)の向こうから、日が昇ってきた。飛騨乗越までの最後10m位は、凍結しており、スキーアイゼン(アルミ製)歯が折れ曲がりそうだったので、アイゼン、シートラにする。飛騨乗越到着は、この日の3番手。1番手は男性2人、2番手は女性単独だ。我々は、そのまま大喰岳ピークを目指すが、他の3人は、飛騨沢を大滑降していったが、季節外れのパウダー満喫だったに違いない!
写真は、槍ヶ岳の穂先を背に、シートラしてちょっとした岩峰を巻く私(山森)。雪が硬く凍結しているので、久しぶりにアイゼン・ピッケルを真剣に使い、ちょっと緊張する。大喰岳山頂(3101m)は、360°の大展望。ちょっと感動。山頂では、槍沢・槍岳山荘から来た先行の5〜6人の山スキーパーティが、山頂の先のコルの雪庇の切れ目から大喰岳東面カールに向けて丁度滑り出すところだった。
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先行パーティの滑り出し地点は急なので、我々は山頂から南東尾根上から回り込むような感じで、山頂から大滑降した。写真は、槍ヶ岳の穂先を背に、山頂から滑り出した私(山森)。
穂高連峰を眺めながら、大喰岳東面カールを大滑降する。気持ちがよい。晴れ渡りたる青空〜♪ 輝き満てる雪原〜♪
石橋兄はテレマーク。昨日の降雪で、西面の飛騨沢がパウダーであっただろうのに対し、この斜面は東面で朝から日が当っており重い湿雪といった雪質だ。
槍沢(写真左)との合流点を目指して、小回りで気持ちよく滑り降りた。雪質はあまり良くないが、私の調子は、すこぶる上々で、今までで、1、2を争うほど、快適な大滑降を満喫できた。槍沢ロッジ泊の計画だが、この日のうちに槍沢をつめて槍岳山荘泊にしようと相談した。そういうことでスキーを十分満喫した私は、トラバースして槍沢Co2350m付近で大休憩。石橋兄はもったいないので、Co2200m付近まで滑ってから、登り返すという。
石橋兄が登り返すのを、一時間位待って合流すると、槍沢の登りのトレースのすぐわきを表層雪崩が音もなく流れていくのに気が付いた。雪崩の進む方向には多くの登山者が登ったり、休憩したりしている。我々は、左岸側に避難しながら、下に向かって大声で雪崩を知らせ、左岸側に避難するようにジェスチャする。最初は動きが鈍かった休憩者等も事態に気づき、避難を開始した頃、雪崩は止まった。
雪崩の件もあり、この日のうちに槍沢を登って槍岳山荘に向かうのはヤメにし、当初の計画通り槍沢ロッジに向かうことにする。槍沢を下って、下から雪崩を見ると、先ほど滑ってきた大喰岳東面カールの上部から切れ落ちるように表層雪崩が発生しているのがわかる。我々の先行パーティは、カール上部を斜めに滑り出して、途中からトラバースして天狗原方面へ向かったのだが、そのトレース付近から雪が切れて落ちたようにも見える
槍沢ロッジに到着し、ビールで乾杯。先ほどの雪崩の写真を見ると、カール上部の雪庇もかなり大きく、気温が上がって雪が落ちれば、かなり危険な状態だと思われる。今回は危機一髪で、雪崩に巻き込まれることはなかったが、1〜2時間前に滑った斜面が、雪崩たのを見ると、気持ちが良いものではない。先行パーティのトレース等に惑わされないで、自ら危険の判断をすることが重要と再認識した。槍沢ロッジは風呂もあり、快適。
<3日目>
気温が上がる前に、槍沢を登ってしまいたいので、早起きして4:40に槍沢ロッジを出発。2時間位頑張って歩いて、Co2200m二股で、槍沢ロッジで準備してもらった朝食(弁当)を食べる。なかなか美味しい。二日続けての雲ひとつない快晴。日焼け止めを念入りに塗る。
昨日の雪崩跡のすぐ右側をシール登高する石橋兄。デブリは2〜3mの高さになっている。ビーコン、ゾンデ棒、スコップの三種の神器は、今や、雪山登山や山スキーの必携の個人装備だと言われている。昔はそんなもの持っていなかったといって、これらの装備を持たずに雪山に入っている人がいるならば、自分が助かるためだけでなく、目撃したときに他人を助けるためにも、今後は必ず装備して欲しいものだ。
槍沢をCo2600m付近まで登ると、槍ヶ岳の穂先が見えた。以後、この穂先を眺めながら、槍ヶ岳の肩を目指して、シール登高する。
槍ヶ岳の肩の到着した私(山森)。我ながら、実に満足そうな顔をしている。黒部源流の山々が見渡せる。写真中央は鷲羽岳(2924.2m)で、カールが2段になっているのが特長的だ。
来年のGWは、太郎平小屋や双六小屋などの営業小屋を活用して、軽装での黒部源流のスキーを楽しみたいものだ。そういえば、今年は双六小屋の小屋開きの入山で、小屋菅の方の遭難があり、このGWの営業は見合わせているとのこと。ご冥福をお祈りします。
槍の穂先をバックに石橋兄。雪が付いていなければ穂先まで登るつもりであったが、白く雪が付いている。何人かが、アイゼン・ピッケルで登っているのが見えるが、先行パーティ等に惑わされないで、自ら危険の判断をすることが重要と再認識したばかりなので、勇気を持って断念した。北鎌尾根を登ってきた2人が、「穂先からの下りは怖かった」「ノーザイルで大勢登って事故がないのが不思議」と言っていたので、本当に怖いのだろう。
飛騨乗越までは、アイゼン・シートラで降りる。正午に飛騨沢の滑降開始。写真は石橋兄。写真には写っていないが、笠が岳から双六岳までの山々を眺めながらの大滑降だ。気持ちが良い!
飛騨沢下部では、左岸側のカンバ帯を滑った。写真は、乗鞍岳(3026m)を見ながら滑る私(山森)。
涸沢岳などの穂高連峰を眺めながら、槍平まで滑り込む石橋兄。もったいないので、ゆっくりと味わいながら降りてきたつもりだが、飛騨乗越から槍平まで、標高差1020mを、わずか40分で滑ってきてしまった。(前日の登りは4時間以上かかった。)ちょっとうれしかったのは、標高差1020mを、一度も転ぶことなく、パラレルターンの小回りや大回りで快調に降りてこれたこと。標高差1000m以上を転ばずに滑降したのは、おそらく初めて。
計画では、槍平にもう1泊する予定であったが、翌日から天気が下り坂との予報であり、まだ時間もあるので、その日のうちに下山することにする。沢(右股谷)を滑っていくが、後半は、写真のようなところを多く滑っていく必要があり、久々の不快調なスキー。十勝春合宿の重荷での下山を思い出す。Co1540m付近で夏道向けて登り返すが、沢伝いへのスキートレースもあった。このトレースの人々は、無事下山できたのか他人事ながら気になる。
白出沢出合林道終点(Co1540m)から、運動靴をデポした柳谷(Co1450m)までは、2〜3箇所雪が切れていてスキーを脱いだが、基本的には、スキーで立っているだけで下山できる。あとは1時間半の林道歩きで17:30に新穂高温泉に下山した。新穂高温泉では、日帰り入浴は時間が遅くダメ。結局、平湯まで行って、
「ひらゆの森」という温泉施設の広大な露天風呂に入浴(500円)。山にスキーに温泉に、大満足のGW前半戦だった。
(報告:
山森 聡)
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